経営者の資産は、サラリーマンや公務員のそれとは性質が大きく異なります。**最大の資産が「自社株」**であることが多く、つまり資産の大半が事業リスクに集中しています。
この前提を理解した上で、経営者は次の 3 つの軸で資産を設計する必要があります。
軸1:事業リスクの集中を分散する
自社株が資産の 80-90% を占める経営者は珍しくありません。事業が好調なうちは問題ありませんが、業界の構造変化やリーマン級のショックで、資産の大半が失われる可能性があります。
分散の手段として、経営者は次の選択肢を持っています。
- 役員報酬を上げて個人資産を積む — 法人税 vs 所得税の最適化が必要
- 退職金制度の活用 — 将来の役員退職金を見据えた準備
- 不動産への投資 — 社宅・社長自宅の購入スキーム
- M&A・部分売却 — 一部売却でキャッシュ化
どれも一長一短で、税務の設計がセットです。単独では動けません。
軸2:流動性を確保する
経営者の資産は、流動性の低いものに偏りがちです。自社株は売れない、不動産も簡単には現金化できない、保険も途中解約は損。
不測の事態(事業の急な資金需要、自身の健康問題、家族の事情など)に備えて、生活費の 2-3 年分を流動資産(預金・上場株・投資信託)で持っておくのが基本です。
軸3:世代を超えた設計
経営者の資産は、相続・事業承継という大きなイベントを避けて通れません。無策のまま相続が発生すると、相続税のために自社株を売却せざるを得ず、経営権を失うケースも実際にあります。
早い段階から次の検討が必要です。
- 持株会社化 — 株式評価額の引き下げ
- 種類株の活用 — 議決権と経済的権利の分離
- 生前贈与 — 暦年贈与・相続時精算課税の使い分け
- 生命保険 — 相続税の納税資金として
これらは税制改正の影響を受けやすいため、毎年見直しが必要です。
資産配分の原則
上記 3 軸を踏まえた、経営者の資産配分のひとつの目安:
- 事業(自社株):60-70% — 主要な成長ドライバー
- 流動資産(預金・株・投信):15-20% — 緊急時対応と資産運用
- 不動産:10-20% — インフレヘッジと相続税対策
- その他(保険・退職金準備等):5-10% — セーフティネット
事業のリスクレベル、家族構成、年齢によって比率は変わりますが、この程度のバランス感覚を持って資産全体を見ることが重要です。
まとめ
経営者の資産防衛は、個人と法人、短期と長期、経営と相続を一体で考える必要があります。どれかひとつだけ最適化しても、全体としては歪みが残ります。
こうした長期の資産設計は、経営戦略・財務 サービスでも一緒に考えていくテーマのひとつです。